
小説家の大谷(浅野忠信)は、その才能とは裏腹に、酒と女に溺れてしまい借金も抱えてしまういわゆるダメ亭主。
妻の佐知(松たか子)は、そんな大谷を健気に支え、自分が働いて借金を返す生活をしていた。
働き先の居酒屋で佐知は人気者となり、お店は大繁盛に。そんな中、お店に足繁く通う青年、岡田(妻夫木聡)や、若かりしころ好きだった弁護士の辻(堤真一)から、好意を抱かれることになる。
綺麗になっていく佐知に強い嫉妬を覚える大谷は、作家として、夫として、人間として生きていくことに失望をし、愛人の秋子(広末涼子)と心中未遂を起こす。
映画「ヴィヨンの妻」オフィシャルサイト
なぜこんな男に女は惚れ、健気にも尽くすのか。
そこは昔も今も不変な、理屈では説明できないものがあります。
その説明できない男女の関係を、この「ヴィヨンの妻」という作品はひとつの答えを出してくれているようにも思えます。
この映画のみどころは、ズバリ、「男の弱さを支え、懐深く愛し抜く、凛とした女性の一途な愛」だと思います。
夫が借金や愛人を作っても、仕事はせずに泥棒をはたらいたとしても、大きな愛で夫を支え包みこむ佐知の姿は、とても誠実で尊いものです。
と言うと、大半の女性が眉間にしわを寄せて「単なる都合のいい女なだけじゃん」「男の勝手な言い分」と怒るのでしょうけれど。
そんな大きな愛で夫を支える佐知を、松たか子が見事に演じています。
驚いたのは、広末涼子。
色気があって妖しくて、ガラスのようにもろくて壊れやすい、そんな女性を演じています。
「おくりびと」では、夫を支える優しい女性を演じた広末涼子が一変して真逆の女性を演じています。
浅野忠信が演じる大谷は、本当にどうにもならない男なんだけれど、なぜかどこか魅力を感じてしまう。
それは知性なのか危うさなのか。単なる女たらしだからか。
こんな男がモテるというのがなんとなくわかるし、佐知が愛し続けるというのも見ていてわかるのが悔しい。
あと、佐知が借金返済のために働き出した小料理屋「椿屋」の夫婦(伊武雅刀と室井滋)の作り出す空間がとても心地いい。
大谷はこの小料理屋で泥棒をしたのにも関わらず、この夫婦は佐知の面倒をいろいろと見てくれる。
平成の今にはなかなか見られない、あたたかな人の交わりが感じられます。
多少不便なことが多くても、この時代にはあたたかな日本があるなぁと羨ましく思いました。
今の若い人は、佐知の姿を見て理解できない人も多いかもしれませんが、少しでも佐知の心を汲み取るような豊かな心持ちで見てくれたらと思います。