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狸界の次の頭領を決めるべく、下鴨家と夷川家は宿命の抗争を日々繰り広げていた。
狸界を背負ってたっていた立派な父を持つ下鴨家の四兄弟は、どれもみな父には遠く及ばない未熟な若狸。
何かと四兄弟の邪魔をする夷川家の金閣・銀閣、かつては狸に化け学を教授して今はすっかり神通力を失った天狗、狸や天狗さえも魅了してしまう美しい弁天も入り混じり、京都の街は大騒動。

ジブリの平成狸合戦ぽんぽこみたいな、タヌキの世界を描いたファンタジー作品。
京都を舞台に、狸界を束ねる頭領争いが日々繰り広げられ、
天狗やら、すべての生き物を魅了する弁天やらも出てきて、まるで終始お祭り騒ぎのような物語。

そして愛すべきキャラクターたち。
ほんとに上手です、キャラの設定。
狸の下鴨四兄弟は、長男・次男・三男・四男と性格はバラバラで、
「長男は責任感が強いけれど慎重で大物にならない」など、
世間一般に伝わる性格に設定されていてわかりやすく、感情移入もしやすいです。
次男は世捨て人（狸）になって化けた蛙から狸に戻れなくなっちゃったなんて、
たしかに次男っぽいなぁと。
一匹一匹は非力だけれど、兄弟四匹が集まれば百人力の発揮するなんていう、
素敵な家族愛もあったりして、騒いで笑って最後には感動もさせてもらえます。

五山の送り火を、空飛ぶ座敷に乗って祭りを楽しんだり、
叡山電車に化けて街中を走り回ったり、
人間が毎年の年末に「狸鍋」を食べるという金曜倶楽部があったり、
弁天と呼ばれる、狸も天狗も骨抜きにしてしまうほどの美しい女性がいたり、
下鴨四兄弟を陰ながら助ける宿敵夷川家の娘がいたり、
四畳半のアパートにひきこもって赤玉ポートワインばかり舐めている天狗がいたりと、
ページをめくると、実に愉快な世界が広がっています。

そして『夜は短し歩けよ乙女』にも登場していた「偽電気ブラン」がここでも登場。
他の作品の人物やモノを登場させる四次元手法はモリミーのお家芸。
今回もまた炸裂しています。

京都を舞台に、主人公の「僕」は、大学で薔薇色のキャンパスライフを送ることを夢見て、
誤って選んだ道を最初からやり直したいと考えるが。。。
→『四畳半神話大系』

同じクラブの後輩の女の子にひとめぼれし、彼女の後を追い求める「先輩」。
京都の街を舞台に繰り広げられるボーイミーツガール。
→『夜は短し歩けよ乙女』

舞台は京都。祇園祭は宵山。宵山に魅せられた人たちが織り成す、めくるめくストーリー。
→『宵山万華鏡』

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